◉作文のために、思い出を作らなきゃ!と思っていませんか? 

特別な体験がなくても、作文は書ける

「作文の宿題があるから、どこかに連れて行かなくちゃ!」

「何か特別な体験をさせてあげないと、書くことがないかもしれない……」

そんなふうに感じたことはありませんか?

お子さんの作文のために、一生懸命「思い出」を作ろうとするお父さん、お母さん。

旅行に出かけたり、イベントに参加したり、普段はできない体験をさせてあげたり。

もちろん、そうした経験も作文の大切な材料になります。

でも、少し考えてみてください。

作文を書くために、特別な思い出を作る必要はあるのでしょうか。

実は、作文の材料は、もっと身近なところにあるのです。

1.何げない日常にこそ、作文の種がある

例えば、こんな出来事はどうでしょう。

・朝、セミの声がうるさくて目が覚めた。
・いつもより冷たい麦茶がおいしかった。
・おばあちゃんの家に入ったとき、懐かしい匂いがした。
・弟とケンカをして、悔しかった。
・子どもの歯が、最後の一本まで抜けた!

どれも、特別な旅行や大きなイベントではありません。

けれど、そこには、その子だけが感じたこと、考えたことがあります。

セミの声を聞いて、どんな気持ちになったのでしょう。

冷たい麦茶を飲んだとき、どんなことを感じたのでしょう。

弟とケンカをしたあと、何を考えたのでしょう。

同じ出来事でも、感じ方は一人ひとり違います。

その小さな違いこそが、作文の材料になるのです。

2.作文で大切なのは「何をしたか」より「何を感じたか」

作文というと、つい「何をしたか」に目が向きがちです。

どこへ行ったのか。
誰と遊んだのか。
どんな体験をしたのか。

もちろん、出来事を伝えることも大切です。

でも、それだけでは、どの子も似たような作文になってしまうことがあります。

例えば、夏休みに海へ行った作文。

「家族で海に行きました。泳いだり、砂浜で遊んだりしました。とても楽しかったです。」

これでも、出来事は伝わります。

では、ここに、その子が感じたことを加えてみたらどうでしょう。

「海に入った瞬間、思っていたより水が冷たくて、思わず声が出ました。波が足にぶつかるたび、砂がさらさらと動いて、足が埋まっていくのが不思議でした。」

同じ海での体験でも、感じたことを言葉にすると、その子にしか書けない作文になります。

作文で大切なのは、出来事の大きさではありません。その出来事を通して、自分が何を感じ、何を考えたか。

そこに、その子らしい言葉が生まれます。

3.五感を使うと、日常が作文の材料に変わる

では、どうすれば日常の中から作文の材料を見つけられるのでしょうか。

そのヒントになるのが「五感」です。

・目で見る:空の色、雲の形、花の様子
・耳で聞く:セミの声、雨の音、家族の笑い声
・鼻で感じる:ご飯の匂い、雨上がりの土の匂い
・舌で味わう:冷たい麦茶、甘い果物、苦手な野菜
・肌で感じる:風の冷たさ、日差しの強さ、汗のべたつき

普段、何となく通り過ぎていることも、五感を意識すると、新しい発見につながります。

「暑かった」で終わる夏の日も、

「背中にじりじりと日差しが当たり、額から汗が流れてきた」

と表現すれば、読んでいる人にも、その暑さが伝わります。

見て、聞いて、感じて、考える。

その積み重ねが、豊かな表現力を育てていきます。

4.「書くことがない」と言ったときの、親の問いかけ

お子さんが「作文に書くことがない」と言ったら、特別な出来事を探す前に、今日一日を一緒に振り返ってみましょう。

例えば、こんな問いかけです。

「今日、どんな音が聞こえた?」

「何か、いい匂いがした?」

「今日食べたもので、おいしかったものは?」

「うれしかったことや、悔しかったことはあった?」

「今日、ちょっと不思議だなと思ったことは?」

大切なのは、すぐに文章を書かせようとしないこと。

まずは、親子の会話の中で、感じたことや考えたことを引き出してあげましょう。

「別に何もなかった」と答えていた子も、話しているうちに、

「そういえば、今日、友達が変なことを言って笑ったんだよ」

「給食のスープがいつもと違う味だった」

と、少しずつ思い出していくことがあります。

その言葉の中に、作文の種が隠れているのです。

5.最初から立派な作文にしなくていい

作文が苦手な子は、書き始める前から「上手に書かなきゃ」と思っていることがあります。

でも、最初から立派な文章にする必要はありません。

まずは、感じたことを一つ、言葉にしてみる。

「冷たかった」
「悔しかった」
「変だなと思った」
「なんだかうれしかった」

そんな短い言葉で十分です。

そこから、

「どうしてそう感じたの?」
「どんなところが印象に残ったの?」
「そのとき、何を考えたの?」

と、少しずつ深めていけば、自分の思いや考えを表現する文章につながっていきます。

作文は、いきなり書き始めるものではありません。

感じること、考えること、言葉にすること。

その積み重ねが、書く力を育てていくのです。

作文のために、思い出を「作る」必要はありません

特別な場所に出かけなくても、特別な体験をしなくても、私たちの毎日には、たくさんの発見があります。

大切なのは、その小さな発見を見過ごさないこと。

今日の一日を、五感でよく感じてみましょう。

そして、心が動いた瞬間を、自分の言葉で表してみましょう。

何げない毎日の中にこそ、その子だけの作文の種が隠れているのです。

作文のために、特別な思い出を作るのではなく、日常の中にある「心が動いた瞬間」を見つけること。

それが、自分らしい作文を書くための第一歩です。

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国語のいろは

国語専門塾「国語のいろは」では、答えや書き方のテクニックを教えるだけでなく、子どもたちが自分で感じ、考え、自分の言葉で表現する力を育んでいます。

日常の小さな気づきを大切にしながら、子どもたちの「書けた!」という喜びにつなげていきたいと考えています。